法定後見人の解約は難しい?法定後見制度とは?
弁護士が成年後見人として男女2人から預かった1450万円を着服したとされている事件が起こりました。近年利用が増加している成年後見制度とその問題点とは?
■成年後見制度とは?
成年後見制度とは、認知症、知的障害、精神障害などの理由で判断能力が不十分な方々を保護し、支援するための制度です。
成年後見制度には、大きく分けて、法定後見制度と任意後見制度の2つの制度があります。
・法定後見制度
法定後見制度は、家庭裁判所が選任した成年後見人(後見人、保佐人、補助人)が、本人の財産や生活の管理、意思決定をサポートする制度です。
・任意後見制度
任意後見制度は、本人が十分な判断能力を有する時に、あらかじめ、任意後見人となる方や将来その方に委任する事務の内容を公正証書による契約で定めておく制度です。
■法定後見制度の利用者数
近年、高齢化社会の進展に伴い、認知症患者の増加などから、法定後見制度の利用者数は増加傾向にあります。
2022年末時点における法定後見制度の利用者数は、245,087人であり、前年比で約3.3%増加しています。
法定後見人になる人は、大きく分けて以下の3つのグループに分けられます。
・親族
・専門家
・地域の市民(市民後見人)
■親族
親族が本人の生活や財産状況をよく知っており、本人の意思を尊重して後見業務を行うことができると考えられるためです。
■専門家
弁護士、司法書士、社会福祉士、行政書士などの法律や福祉の専門家も、法定後見人となることができます。
専門家は、法律や福祉に関する知識や経験を活かして、後見業務を適切に行うことができます。
■地域の市民(市民後見人)
地域の市民が、ボランティアとして法定後見人となることもできます。
市民後見人は、家庭裁判所の研修を受けて、後見業務の基本を学んだうえで、後見人として活動します。
なお、法定後見人になるためには、法律で定められている欠格事由に該当しないことが条件となります。
■法定後見人の役割
法定後見人には、以下のような役割が期待されています。
・本人の財産や生活を適切に管理・処分する
・本人の意思決定を補助する
・本人の権利を守る
法定後見人は、本人の意思を尊重して、本人らしい生活を送れるようにサポートすることが大切で
す。
■法定後見人は自由に選べる?
「法定後見制度」では、本人の判断能力が不十分になった場合に、家庭裁判所が後見人等を選任します。この場合、本人が希望する人を後見人等に選任してもらうためには、家庭裁判所に申立てを行う必要があります。
申立てを行う際には、本人の意思表示や、後見人等に選任する候補者の適格性などを、家庭裁判所に説明する必要があります。
家庭裁判所が成年後見人を選任する際に、サポートを受ける本人の希望は参考にされますが、本人が自由に成年後見人を選ぶことができる訳ではありません
■法定後見人は簡単に解任することはできない?
成年後見人を解任するためには、以下のいずれかの理由がなければなりません。
・後見人が、不正な行為、著しい不行跡その他後見の任務に適しない事由 がある場合
・後見人が、本人の同意を得ずに、本人の財産を処分した場合
・後見人が、本人の意思に反して、本人の生活を妨害した場合
これらの理由を満たす場合は、本人、後見監督人、検察官のいずれかが家庭裁判所に解任の申立てを行うことができます。
また、家庭裁判所は、職権で後見人を解任することもできます。
ただし、後見人が、本人の財産を適切に管理・処分しており、本人の意思を尊重して後見業務を行っている場合、単に本人や親族の希望で解任することはできません。
成年後見人を解任するには、慎重な検討が必要です。
■まとめ
法定成年後見制度は、本人の判断能力が低下した際に、本人の財産や生活を適切に管理・処分し、本人の意思を尊重した支援を行うための制度です。
メリットとしては、本人の財産や生活を守り、本人の意思を尊重した支援を受けることができることが挙げられます。
デメリットとしては、家庭裁判所の介入が必要になるため、手続きに時間や費用がかかる点や、後見人等の不正行為や著しい不行跡のリスクがある点が挙げられます。
また、本人の判断能力が低下する前に、任意後見制度を利用することにより、これらのデメリットを軽減することができます。
任意後見制度は、本人の判断能力が低下した後に、家庭裁判所の介入を経て後見人等を選任する法定後見制度と比べて、本人の意思を尊重した後見制度として位置づけられています。
後見制度は、本人の判断能力が低下した際に、本人の財産や生活を守り、本人の意思を尊重した支援を行うための重要な制度です。
後見制度の利用を検討している方は、早めに専門家に相談することをおすすめします。
後見制度についてご不明な点等ございましたら、当事務所にご相談下さい。