家族信託で認知症患者の財産を守る!その手続きは?

■認知症とは何か、その影響とは?

高齢化の進展にともない、認知症の患者数も増加しています。2025年には65歳以上の高齢者のうち、認知症の有病率は約18.5%で、認知症患者数は約675万人と推計されております。
(出典:内閣府「令和5年全国将来推計人口値を用いた全国認知症推計(全国版)」)

認知症は、脳の病気や障害によって、記憶力や判断力、理解力などの認知機能が低下し、日常生活の基本的な動作や判断ができなくなるため、家族や介護サービスの支援がなければ、自立した生活を送ることができません。本人にとってもですが、家族にとっても大きな負担となる病気です。

そのため、あらかじめ財産や介護に関する意思決定をしておくことが大切です。
その意思決定をしておくための一つの方法として、家族信託があります。

■家族信託とは?

家族信託とは、財産の所有者(委託者)が、信頼できる人(受託者)に、財産の管理・運用・処分などの権限を委任する制度です。

■家族信託の特徴とメリット

家族信託の特徴
・財産の所有権は委託者に残るため、委託者の死後も財産が受託者に引き継がれる。
・委託者は、信託契約の変更や解除を自由にできる。
・委託者の意思を尊重して、財産を管理・運用することができる。

家族信託のメリット

家族信託のメリットは、以下のとおりです。

・認知症になっても、財産を家族が管理・運用できる。
・不動産の賃貸や売却などの管理を、家族が代わりに行うことができる。
・相続対策や資産承継の手段として活用できる。

■ 家族信託の手続き

家族信託の手続きは、以下の5つのステップで進めていきます。

1、家族会議を行う
家族信託を行う目的や、財産の信託内容、受託者や受益者などを決めるために、家族会議を行います。

2、信託契約書を作成する
家族会議で決めた内容を、信託契約書にまとめます。信託契約書は、公正証書で作成します。

3,財産を信託財産とする
信託契約書を作成したら、信託財産とする財産を信託登記します。信託登記は、法務局で行うことができます。

4、受託者が信託財産を管理する
信託登記が完了したら、受託者が信託財産を管理・運用することになります。

5、受益者が信託財産の利益を受ける
受託者が信託財産を管理・運用した結果、生じた利益は、受益者が受け取ることになります。

■認知症患者の財産を守った事例

A(80代)さんは、自宅とその他に収益物件を所有しており、相続は長男のBさんにしたいと希望していました。しかし、年齢とともに、財産の相続や管理・運用について、判断能力が低下する可能性があります。そこで、Aさんは家族信託を活用して、財産を守ることを決意しました。

Aさんは、Bさんを受託者、Bさんの妻を第一受益者、Aさん自身を第二受益者とする家族信託契約を締結しました。この契約では、Aさんの財産をBさんが管理・運用し、第一受益者であるBさんの妻がAさんの介護費用に充てることと、Aさんが亡くなった後は、Aさんの財産をBさんが相続することとを定めました。

Aさんの認知症が進行し、判断能力が低下した後も、Bさんは家族信託契約に基づいて、Aさんの財産を適切に管理・運用しました。また、Bさんの妻は、Aさんの介護費用に充てるため、信託財産の運用益を活用しました。

Aさんは、認知症が進行した後も、財産が守られ、介護費用に困ることなく、安心して生活を送ることができました。

■まとめ

家族信託には、以下のメリットとデメリットがあります。

メリット

・認知症患者の財産を守ることができる
・認知症患者の希望を実現することができる
・相続税対策に活用できる

デメリット

・家族信託契約を慎重に作成する必要がある
・信託登記を行う必要がある
・定期的に見直しを行う必要がある

家族信託を検討する際には、これらのメリットとデメリットを理解した上で、家族信託が自分に適した制度かどうかを検討することが大切です。

また、家族信託契約は、複雑な内容を含むため、専門家に依頼することをおすすめします。専門家に依頼することで、認知症患者の希望や、家族間の取り決めなどを、適切に反映した家族信託契約を作成することができます。

家族信託は、認知症対策として有効な手段の一つです。しかし、家族信託を活用する際には、事前に十分な検討と準備を行うことが大切です。

家族信託について、ご不明な点等ございましたら、当事務所までご相談下さい。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です