泥沼の相続放棄トラブル! 相続放棄の注意点とは?
■はじめに
相続は、人生における大きなイベントのひとつです。しかし、相続にはさまざまなトラブルがつきものであり、そのひとつが借金問題です。
借金は、被相続人の遺産として相続人に引き継がれます。そのため、被相続人に借金があった場合、相続人は借金を相続することになります。
借金を相続したくない場合は、相続放棄という選択肢があります。しかし、相続放棄には注意点がいくつかあります。
■相続放棄が選択肢となるケース
相続放棄が選択肢となるケースは、大きく分けて以下の2つです。
・被相続人に借金があり、相続財産が借金よりも少ない場合
・被相続人に多額の借金があり、相続放棄することで相続人の生活が困窮する恐れがある場合
以下に、相続放棄が選択肢となった事例を紹介します。
田中太郎さんは、60歳で亡くなりました。太郎さんには、妻の美代子さんと、息子の一郎さんと二郎さんがいました。
太郎さんは、生前、事業に失敗し、借金を抱えていました。その借金は、約3,000万円にものぼりました。
太郎さんの遺産は、自宅と預貯金で約2,000万円でした。そのため、相続財産は借金よりも少ない状況でした。
美代子さん、一郎さん、二郎さんは、話し合いの結果、相続放棄をすることにしました。
■相続放棄の危険性
相続放棄には、以下の危険性があります。
・次の順位の相続人が借金を相続することになる
・相続放棄の期限を逃すと、単純承認とみなされ、借金を相続することになる
■具体的なトラブル事例
相続放棄をすると、次の順位の相続人が借金を相続することになります。そのため、次の順位の相続人とトラブルになることがあります。
以下に、具体的なトラブル事例を紹介します。
あるケースでは、被相続人に借金があり、相続放棄した相続人がいました。しかし、次の順位の相続人は、相続放棄した相続人が借金を相続するつもりだったと主張し、相続放棄の効力を争う訴訟を起こしました。
また、別のケースでは、相続放棄した相続人が、相続放棄した後に、被相続人の借金の一部を支払ったと主張し、相続放棄を撤回する訴訟を起こしました。
【民法 第915条】
・相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヵ月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。ただし、この期間は、利害関係人又は検察官の請求によって、家庭裁判所において伸長することができる。
・相続人は、相続の承認又は放棄をする前に、相続財産の調査をすることができる。
相続放棄をする前には、必ず相続関係を調査し、自分が相続放棄をしたあとにその権利を承継する次の順位の相続人に、あらかじめ連絡をしなければなりません。その連絡を怠ってしまうと、泥沼の相続トラブルを招いてしまう可能性があります。
■相続放棄に伴う支払い義務の問題
相続放棄をすると、被相続人の債権者に対して、相続放棄した財産の価額を限度として、債務を支払う義務が生じる可能性があります。
■相続放棄の手続きと期限
相続放棄は、家庭裁判所に対して、相続の開始を知った日から3か月以内に申し立てなければなりません。
相続放棄に伴う費用と検討事項
相続放棄の手続きには、以下の費用がかかります。
・郵便切手……500円前後
・相続放棄申述書に使用する印紙代……800円(申述人1名につき)
・被相続人の住民票除票又は戸籍附票……300円程度
・被相続人の死亡の記載がある戸籍謄本……750円程度
また、追加提出などによってはさらに費用がかかるほか、専門家に依頼した場合、さらにコストがかかります。
相続放棄を検討する際には、これらの費用についても考慮する必要があります。
■専門家に相談する際のポイント
相続放棄を検討する際には、専門家に相談することをおすすめします。
専門家は、相続放棄のメリット・デメリットを正確に説明してくれるとともに、手続きの代行も可能です。
■相続放棄の前に考えるべきこと
相続放棄を検討する際には、以下の点をよく考えておく必要があります。
・被相続人の借金の額
・相続財産の額
・相続人の経済状況
・次の順位の相続人の状況
■結び
相続は、人生における大きなイベントです。
そのため、トラブルを避けるために、事前に準備をしておくことが重要です。
具体的には、以下の点に注意しましょう。
・相続に関する知識を身につける
・相続関係を調査する
・専門家に相談する
これらのことに注意することで、相続トラブルを未然に防ぐことができます。
■まとめ
相続放棄は、借金を相続したくない場合に有効な手段ですが、注意点もあります。
相続放棄を検討する際には、慎重に検討し、専門家に相談することをおすすめします。
また、相続トラブルは、相続放棄だけにとどまりません。
相続トラブルを避けるためにも、相続が発生する前に、専門家に相談しておくことも大切です。
相続放棄についてご不明な点等ございましたら、当事務所までご相談下さい。