相続土地国有化、なぜ利用者が少ない?その理由と課題とは?

はじめに:相続土地国庫帰属制度とは?

「相続土地国庫帰属制度」は、相続した土地を国に引き渡すことができる仕組みです。この制度の背景には、相続登記がされないまま土地が放置され、自治体が公共事業を行う際に用地買収の交渉ができないなどの「所有者不明土地問題」があります。この問題は、地方自治体にとって大きな障害となっています。

この制度を利用することで、所有者は土地の管理から解放されます。ただし、制度を利用するためには法務局の審査を受ける必要があり、審査が承認されると、所有者は10年分の管理費用として原則20万円を納めることになります。この費用は、土地の管理や保全のために使われます。では現状どのような課題があるのか下記の通り解説致します。

1.制度の進捗状況
2.制度の課題
3.今後の展望と解決策
4.まとめ

1.制度の進捗状況

制度が開始された昨年4月から今年7月末までの間に、相続土地国庫帰属制度を利用して国有化された土地の件数は667件にとどまりました。これは法務省の最新の集計によるものです。

具体的な内訳としては、次の通りです。

・宅地: 272件
・農用地: 203件
・森林: 20件
・その他: 172件

この数字からもわかるように、まだ多くの相続土地が国有化されていない状況です。法務省によると、今年7月末時点で申請件数は2481件に上りますが、審査が続いている案件も多く、審査には平均して約8ヶ月かかるとされています。

2.制度の課題

最大の課題は制度の周知不足です。 相続した土地を持つ人々の多くが、この制度の存在を知らないため、せっかくの制度が十分に活用されていない状況です。特に地方圏では、相続した土地を管理する余裕がない高齢者や、都会に住んでいて土地の管理が困難なケースが増えていますが、制度の情報が届いていないことが問題となっています。

また、申請が却下されるケースも少なくありません。 例えば、土地に建物が残っている場合や、抵当権や賃借権が設定されている場合、申請は却下されます。実際、これまでに41件が却下され、申請後に取り下げられた事例も333件に上ります。このような状況では、相続した土地を手放したくても手放せないと感じる人が多いでしょう。こうしたケースでも、事前に専門家に相談することが重要です。 申請が却下されるリスクや、土地の権利関係をクリアにするための対策について、専門家の意見を仰ぐことで、より確実に手続きを進めることができます。

3.今後の展望と解決策

今後、この制度をより効果的に活用するためには、広範な周知活動が不可欠です。地方自治体やコミュニティを通じて、制度の存在とそのメリットを広く知らせる必要があります。また、申請プロセスの簡略化や、条件の緩和も検討されるべきでしょう。

さらに、自治体との連携が重要です。地方自治体がこの制度を積極的に活用することで、公共事業の進行をスムーズにし、地域の発展につなげることができます。所有者不明土地問題の解消は、地域社会全体の利益につながるため、国と自治体が協力して取り組むべき課題です。

4.まとめ

「相続土地国庫帰属制度」は、所有者不明土地問題を解決するための重要な制度ですが、まだ十分に活用されていないのが現状です。周知不足や申請条件の厳しさが課題として浮き彫りになっていますが、これらの課題を解決することで、より多くの相続土地が適切に管理され、地域社会の発展に寄与することが期待されます。

また、この制度を利用する前に、専門家への相談が非常に重要です。 土地の状況や家族の状況によっては、他の選択肢がより適切である場合もありますし、申請プロセスや必要書類についても専門的なアドバイスを受けることでスムーズに進められます。専門家と事前に相談することで、後々のトラブルを未然に防ぐことができます。
今後の改善と取り組みによって、この制度がより多くの人々に利用されるようになることを願っております。

出典:法務省:相続土地国庫帰属制度の概要 (moj.go.jp)

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