相続人がいない場合、財産は国のものになる?『相続人不存在』の手続きと対策!国庫帰属の流れとは?
■はじめに
配偶者や子どもがいない場合、自分が築いてきた財産がどうなるのか不安に思われる方も多いのではないでしょうか。兄弟がいても全員が他界していたり、相続人がいないと財産は「相続人不存在」という状態となり、最終的に国に帰属される可能性があります。本記事では、「相続人不存在」になった場合にどのような手続きが必要か、その流れと対策について以下の順で解説します。
1.「相続人不存在」とは?
2.相続人不存在となる要因
3.相続人不存在となった場合の手続きの流れ
4.特定の方への遺贈や寄付を検討している場合
5.まとめ
1.「相続人不存在」とは?
「相続人不存在」とは、被相続人(財産を残す人)に相続人がいない状態のことを指します。相続人がいない場合、その遺産は家庭裁判所によって管理され、特別な手続きを経た後に最終的には国庫に帰属されます。
実際、2022年度には相続人がいないことで国庫に帰属された財産が過去最高額の768億円に達したと報じられています。この金額は2013年以降、9年連続で増加しており、少子高齢化や独身率の上昇が背景にあると考えられます。
2.相続人不存在となる要因
少子高齢化の影響により、配偶者や子どもがいない「おひとりさま」が増加しています。厚生労働省によるデータでは、50歳時点で一度も結婚していない「生涯未婚率」が年々増加しており、男性では約4人に1人、女性では約5人に1人が結婚していない状況です。このような変化により、相続人がいないケースが増えているのです。
3.相続人不存在となった場合の手続きの流れ
相続人がいないと確定した場合、財産は次の手続きを経て国庫に帰属します。
(1)相続財産清算人の選任
相続人がいない場合、家庭裁判所により「相続財産清算人」が選任されます。この役割を担うのは、被相続人の債権者や特別遺贈を受ける人などの「利害関係人」が申立てを行った場合です。清算人は、相続財産の管理と清算を担当します。
(2)相続人捜索の公告
家庭裁判所は、被相続人が亡くなったことを公に知らせ、相続人がいる場合は名乗り出るよう公告します(少なくとも6ヶ月以上)。これによっても相続人が見つからない場合、「相続人不存在」が確定します。
(3)債権者への公告
相続人がいないと確定した後、被相続人の債権者や特別遺贈を受ける人に名乗り出るよう公告されます(期間は2ヶ月以上)。これにより、未払いの借金や特別な遺贈について対応が行われます。
(4)特別縁故者への財産分与の申し立て
「相続人不存在」が確定してから3ヶ月以内に、被相続人と特別な関係があった「特別縁故者」への財産分与を申し立てることが可能です。特別縁故者には、内縁の配偶者や生前に被相続人の介護をしていた人などが該当します。家庭裁判所の審判を経て分与が行われます。
(5)国庫への帰属
特別縁故者が現れない、または申し立てが却下された場合、財産は最終的に国に帰属します。
4.特定の方への遺贈や寄付を検討している場合
相続人不存在が予想される場合、希望する相手や団体に遺産を遺贈したいと考える方もいるでしょう。たとえば「お世話になった人に遺産を残したい」あるいは「社会貢献のために寄付したい」という意思がある場合、遺言書の作成をお勧めします。遺言書を作成し、意思を明確にしておくことで、自分の財産を希望する形で活用できます。
5.まとめ
少子高齢化や未婚率の上昇といった社会の変化により、「相続人不存在」が増加する傾向にあります。相続人がいない場合には、上記の手続きに従い、財産は最終的に国庫へ帰属しますが、生前に遺言書を作成しておくことで、希望する財産の使い方を指定することが可能です。
「おひとりさま」としての財産をどうしたいかを一度考え、必要に応じて専門家に相談しながら、適切な手続きを進めていきましょう。