デジタル遺言制度
デジタル遺言制度とは、デジタル技術を使い遺言書を作成・保管できる制度です。現在、日本では遺言書を作成するには、民法で定められた方式を守る必要があります。現行の民法は遺言書が本人の意思に基づいて作成されたと分かるように紙面に手書きと押印が必要だと規定されております。また遺言書の方式には厳格なルールがあり、形式に不備があると無効となってしまう可能性があります。
デジタル遺言制度が導入されると、遺言書をパソコンやスマートフォンで作成できるようになり、署名・押印もデジタル署名で代替できるようになります。また、遺言書はクラウド上に保管されるため、改ざんのリスクも低くなります。高齢者を含めてパソコンなどを使いこなす人が増える中、作成時の手間を省いて遺言書の活用を促進し、家族間の紛争を防ぐ狙いがあります。
■デジタル遺言制度のメリットは、大きく分けて以下の3つです。
・作成が簡単になる
デジタル遺言制度では、パソコンやスマートフォンで遺言書を作成できるようになります。そのため、紙の遺言書のように、筆圧や字体に気を遣う必要がなくなります。
・保管が安全になる
デジタル遺言制度では、遺言書はクラウド上に保管されます。そのため、紙の遺言書のように、紛失や盗難のリスクを減らすことができます。また、ブロックチェーン技術などの技術を用いて改ざんの防止も図られます。
・利便性が向上する
デジタル遺言制度では、遺言書の作成や保管をオンラインで行うことができます。そのため、遺言書の所在を家族に伝える必要がなく、いつでもどこでも遺言書を確認することができます。
■デジタル遺言制度には、以下の課題も指摘されています。
・セキュリティの担保
デジタル遺言書は、クラウド上に保管されるため、セキュリティ対策が重要となります。万が一、クラウドサービスが不正アクセスを受けた場合、遺言書が改ざんされるリスクがあります。
・法的な整備
デジタル遺言制度が導入されるためには、民法などの法的な整備が必要です。現時点では、デジタル遺言制度に関する法律は制定されていません。
また、遺言者本人の真意の確認をする為の仕組みの導入も焦点になります。
・社会的な認知度
デジタル遺言制度が広く普及するためには、社会的な認知度を高める必要があります。現在、デジタル遺言制度は一般的に知られていないため、導入後も混乱が生じる可能性があります。
■今後の展望
政府は、2024年度中にデジタル遺言制度の導入を目指しています。デジタル遺言制度が導入されると、遺言書の作成がより簡単で安全なものになると考えられます。また、デジタル遺言制度の普及により、遺言書の作成率の向上も期待されます。