非嫡出子の相続、事前にトラブルを防ぐための対策とは?
■非嫡出子とは
非嫡出子とは、婚姻関係にない男女の間に生まれた子です。婚姻関係にある男女の間に生まれた子を嫡出子といい、非嫡出子と区別されます。非嫡出子には、嫡出子とは異なる以下の特徴があります。
・父親が認知しなければ、父親と非嫡出子の間に法律上の親子関係は生じません。
・非嫡出子の親権は、原則として母親が単独で行使します。
親権者を父親に変更することは認められる場合がありますが、その場合も共同親権ではなく、単独親権となります。
・非嫡出子は、原則として母の氏を称します。ただし、家庭裁判所の許可を得て父の氏に変更することは認められます。非嫡出子は、氏を称する側の親の戸籍に入ります。
■父親による非嫡出子の認知は、以下のいずれかの方法によって行います。
・戸籍法に基づく市区町村への届出(民法781条1項)
・遺言(同条2項)
・認知の訴え(民法787条)
なお、非嫡出子の父母が婚姻し、かつ父親の認知を受けた場合には、非嫡出子は嫡出子の身分を取得します(民法789条)。これを「準正」と言います。
非嫡出子は、父親の認知を受けなければ、法律上の親子関係が成立しません。父親が認知を行うと、非嫡出子は父親の子として戸籍に記載され、嫡出子と同じ相続権を有することになります。
■非嫡出子の相続トラブル
非嫡出子が相続人となった場合、以下のようなトラブルが発生するリスクがあります。
・認知されていない非嫡出子が認知の訴えを提起する
亡くなった父親に認知されなかった非嫡出子は、父親の相続人を相手方として、裁判所に「認知の訴え」を提起することができます。認知の訴えが認められれば、非嫡出子は父親の相続権を取得することになります。
・非嫡出子があとから判明し、遺産分割が無効になる
相続発生後に非嫡出子が判明した場合、その非嫡出子を参加させずに遺産分割を行った場合、その遺産分割は無効となります。
・非嫡出子と連絡がとれず、遺産分割協議ができない
非嫡出子と嫡出子が、日常的に連絡をとり合っているケースは少ないです。父親が亡くなり、遺産分割協議を行う必要が生じても、嫡出子が非嫡出子と連絡をとれないことがよくあります。
・非嫡出子と嫡出子が対立する
非嫡出子と嫡出子は、複雑な家族関係ゆえに険悪である例も見られます。この場合、遺産をめぐって非嫡出子と嫡出子が対立し、遺産分割協議がまとまらないケースも多いです。
■非嫡出子の相続トラブルを予防する5つの対策
非嫡出子の相続トラブルを予防するには、以下の対策が考えられます。
・生前に非嫡出子を認知する
非嫡出子を認知しないままご自身が亡くなると、非嫡出子が認知の訴えを提起して、相続トラブルが深刻化するおそれがあります。
相続トラブルを予防する観点からは、生前の段階で市区町村に認知届を提出しておくのがよいでしょう。また、遺言によって認知を行うこともできます。
・遺言書を作成する
遺言書を作成して、遺産の分け方をあらかじめ指定しておけば、非嫡出子と嫡出子が遺産をめぐって争う事態を防げます。また、非嫡出子の認知が済んでいない場合は、遺言によって非嫡出子を認知することも可能です。遺言執行者に専門をすると、ご自身の死後、遺言の内容を確実に実現してもらえます。
・生前贈与を行う
財産の分け方をあらかじめ決めておくという観点からは、生前贈与を行うことも考えられます。自身が財産を与えたい人との間で贈与契約を締結して、財産を移しておきましょう。生前贈与には、ご自身の財産を早い段階から次世代に活用してもらえるメリットもあります。
・非嫡出子と連絡を取っておく
非嫡出子と嫡出子が、日常的に連絡をとり合っている場合、相続発生後に遺産分割協議がスムーズに進む可能性が高くなります。
非嫡出子と連絡を取っておくことで、遺産分割協議の際にも円滑なコミュニケーションが取れるでしょう。
・事前に専門家に相談する
非嫡出子の相続トラブルは、複雑な法律問題が絡むケースも少なくありません。
非嫡出子の相続に関する相続トラブルが発生する前に、事前に専門家へ相談することをおすすめします。
まとめ
非嫡出子の相続トラブルを予防するためには、生前に非嫡出子を認知したり、遺言書を作成したりして、遺産の分け方を明確にしておくことが有効です。また、非嫡出子と連絡を取っておくことも、相続トラブルを予防する上で大切です。
もし、非嫡出子がいる場合は、相続トラブルを未然に防ぐために、事前に専門家へ相談することをおすすめします。