マンションの空き家問題、高齢化・多死社会で深刻化

高齢化・多死社会の到来に伴い、マンションや公営住宅で、相続人がいない、引き取り手のない空き家が急増しています。入居者が亡くなったあと、遺品が放置される空き部屋について、国土交通省が2019年に行った調査では「公営住宅」では全国で約1800戸に上り、人口の多い東京・大阪などの大都市部はもちろん、地方でも多い地域があることがわかっています。こうした、引き取りてのいないマンションの空き家は、管理費・修繕積立金の滞納や安全性の問題など、マンションの管理組合や自治体にさまざまな課題をもたらしています。本記事では、空き部屋問題の背景と課題、そして解決に向けた取り組みについて解説します。

  1. 引き取り手のいないマンション空き家問題の背景

空き部屋問題の背景には、以下の3つの要因が挙げられます。

・高齢化・単身化の進行
日本は少子高齢化が急速に進んでおり、2025年には人口の約25%が65歳以上になると推計されています。また、核家族化や晩婚化の進展により、単身世帯も増加しています。これらの社会構造の変化により、親族関係が希薄になり、相続人がいない人が増えているのです。

・相続放棄の増加
相続放棄とは、相続権を放棄することです。築年数が経過したマンションは資産価値が落ちてしまい、債務が相続財産を上回るような場合、相続放棄をすることで、債務を負担せずに済みます。近年、高齢化・単身化の進行に伴い、相続放棄が増加しています。

・空き家問題の深刻化
日本では、少子高齢化や核家族化の進行により、空き家が増加しています。マンション空き家部屋も、空き家の一種と言えます。

  1. マンション空き家問題の課題

マンションの空き家問題には以下の課題があります

・管理費・修繕積立金の滞納
マンションの空き家は、相続人がいないために管理費・修繕積立金の滞納が発生します。その為、管理費等の滞納が続くと、場合によっては管理費等の値上げを検討せざる得なくなり、その負担が他の区分所有者にかかる可能性があります。

・安全性の問題
マンションの空き家は、そのまま放置されているために、火災や盗難などの安全性の問題が生じる可能性があります。また、不法投棄やゴミの放置などの問題も発生します。

・管理組合の負担増
マンションの空き家の管理や処分は、管理組合の負担となります。今の法律は、マンションの空き家の発生や孤独死の多発などが想定されておらず、管理組合は、原則として部屋の中の問題には立ち入ることができません。その為、管理組合は、相続人の調査や遺品整理などを専門家に依頼しなければならず、またその費用を負担しなければなりません。場合によっては固定資産税の滞納があれば差し押さえを避けるためにも、それを負担する必要があるかもしれません。

3. マンション空き家問題の今後

高齢化が進み多くの人が人生の最後を迎える「多死社会」の中で、誰にも相続されないマンションの空き部屋は今後も増えていくことが見込まれます。マンション空き家問題はさらに深刻化すると考えられます。

4. 管理組合・入居者ができる対策

管理組合としては入居者に緊急連絡先を確認し、常に更新し続ける事で、問題が起こったときにすぐに動き出せるように準備しておく事が大事です。また入居者においては自分の死後、部屋が放置されることのないよう終活、エンディングノート、遺言書等の準備をする事も大事です。

■まとめ

マンション空き家問題は、管理組合や入居者だけでの対策では限界もあります。こうした問題については、国も法律を見直す等の、放置された部屋の扱いについて検討中です。マンションの住民たちの過大な負担にならないような制度の改正も必要だと思います。

いずれにせよ、マンション管理組合としてはマンションの空き家に気づいた場合、なるべく早く専門家に相談し、解決に向けて話し合いを進めていく事が大事です。空き家の対処は大変煩雑です。その為しばらく様子を見てみようなど放置してしまいがちです。放置が長期間に及べば空き部屋の状況は悪化を続け、マンションの資産価値にも影響しかねません。一刻も早く解決に向けて専門家と動き出す事が必要です。ご不明な点などございましたら、当事務所へご相談下さい。

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