認知症になったら「困る」を「安心」に! 未来に備える任意後見制度とは?

高齢化社会の進展に伴い、認知症などの判断能力の低下が問題となっています。
判断能力が低下すると、日常生活や財産管理が困難になるため、
後見制度の活用が検討されます。

後見制度には、本人の判断能力が低下してから利用できる「法定後見制度」と、
本人が判断能力があるうちに契約を締結して利用できる「任意後見制度」があります。

本記事では、任意後見制度の概要、メリット、デメリットについて考えます。

■任意後見制度の概要
任意後見制度とは、本人が判断能力があるうちに、将来の判断能力の低下に備えて、
任意後見人を選任し、財産管理や身上監護に関する事務を委任する制度です。

任意後見契約は、公正証書で作成する必要があります。
公正証書には、任意後見人の選任、委任する事務の内容、
任意後見契約の終了条件などが記載されます。

■任意後見人に選任される人
任意後見人として不適格と法定されている事由がない限り、
成人であれば誰でも委任者本人の信頼できる人を任意後見人にすることができます。
本人の子、兄弟姉妹、甥姪等の親族や知人でも大丈夫です。

また、弁護士、司法書士、行政書士、社会福祉士等の専門家に依頼する事もできます。

さらに、市町村等の支援を受けて後見業務を行う市民後見人の制度も活用できます。
いわゆる市民後見人型のNPO法人その他の法人に後見人になってもらうこともできます。

例えば、社会福祉協議会等の社会福祉法人、
公益社団法人成年後見リーガルサポートセンター、
公益社団法人コスモス成年後見サポートセンター、
公益社団法人家庭問題情報センター等があります。

■任意後見人の仕事
任意後見人は、本人の意思を尊重して、財産管理や身上監護に関する事務を
適切に行う義務を負います。
具体的には自宅等の不動産や預貯金等の管理、年金等の受取、
税金や公共料金の支払等々です。

もう一つが、「介護や生活面の手配」です。
要介護認定の申請等に関する諸手続、介護サービス提供機関との
介護サービス提供契約の締結、
介護費用の支払、医療契約の締結、入院の手続、入院費用の支払、
生活費を届けたり送金したりする行為、
老人ホームへ入居する場合の入居契約を締結する行為等です。

以上のように、任意後見人の仕事は、委任者の財産を管理し、
介護や生活面の補助を行うことです。

■任意後見制度のメリット
任意後見制度のメリットは、以下のとおりです。

・本人の意思が尊重される
・本人が判断能力があるうちに契約を締結できるため、
 後見人選任の際に本人の意向が反映されやすい
・任意後見人は、本人の信頼できる人を選べる
・任意後見契約の内容を自由に決められる

■任意後見制度のデメリット
任意後見制度のデメリットは、以下のとおりです。

・任意後見契約を締結するには、公正証書の作成が必要で、費用がかかる
・任意後見人が亡くなったり、辞任したりした場合、
 新たな任意後見人を選任する必要がある

■任意後見制度の活用が向いている人
任意後見制度は、以下の人に向いていると言えます。

・認知症などの判断能力の低下が懸念される人
・将来、財産管理や身上監護に関する事務を任せられる信頼できる人を探している人
・本人の意思を尊重した後見制度を望んでいる人

■任意後見制度の活用方法
任意後見制度を活用するには、以下の手順を踏みます。

・任意後見人候補者を選任する
・公正証書で任意後見契約を締結する
・本人の判断能力が不十分となり、家庭裁判所に任意後見監督人の申し立てをする
・家庭裁判所が任意後見監督人を選任する
・任意後見人として仕事を開始する

■任意後見監督人に選任される人
任意後見監督人は、家庭裁判所によって選任されますが、その役割等から、
本人の親族等ではなく、第三者(弁護士、司法書士、社会福祉士等の専門職や法律、福祉に関わる法人など)が選ばれることが多くなっています。なお、任意後見人となる方や、その近い親族(任意後見人となる方の配偶者、直系血族及び兄弟姉妹)等は任意後見監督人にはなれません。

■任意後見監督人の仕事
任意後見監督人は、任意後見人から定期的に報告を受け、
これに基づいて家庭裁判所に報告し、
その指示を受けて任意後見人を監督します。

このように家庭裁判所がその選任した任意後見監督人を
通じて任意後見人を監督することで、
万が一、任意後見人による不正等があっても、
防止することができるようになっています。

■まとめ

・本人の意思を尊重した後見制度を望む人に向いている
任意後見制度では、本人が判断能力があるうちに、将来の判断能力の低下に備えて、
任意後見人を選任し、財産管理や身上監護に関する事務を委任します。
そのため、本人の意思を尊重した後見制度を望む人に向いています。

・本人が判断能力があるうちに契約を締結できるため、後見人選任の際に本人の意向が反映されやすい
法定後見制度では、本人の判断能力が低下してから後見人や保佐人、補助人が選任されます。
そのため、本人の意向が反映されづらい場合があります。
一方、任意後見制度では、本人が判断能力があるうちに契約を締結するため、
本人の意向が後見人選任の際に反映されやすいというメリットがあります。

・任意後見人は、本人の信頼できる人を選べる
任意後見制度では、本人が任意後見人を選任するため、
本人の信頼できる人を選ぶことができます。

・任意後見契約の内容を自由に決められる
任意後見契約では、財産管理や身上監護に関する事務の範囲や、
任意後見人の権限などを自由に決めることができます。
そのため、本人の状況や希望に合った制度設計を行うことができます。

任意後見制度は、本人の判断能力が低下したときに備えて、
財産管理や身上監護に関する事務を委任する制度です。
本人の意思を尊重した後見制度を望む人に向いています。
任意後見制度を活用する際には、デメリットも理解したうえで、
本人の状況や希望に合った制度設計を行うことが大切です。
任意後見制度についてご不明点などございましたら、当事務所までご相談下さい。

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